2023年4月22日土曜日

【刑法学】牧野英一「刑事責任の性質について」

  意思の自由ということが問題になる。意思自由を前提にすると、そこに倫理の問題が在るということになる。そして犯罪を道徳的責任の問題として考えるとき、それは罪を犯す者の自由意思の発現であるということになる。犯罪による責任が道徳的なものとなる結果、刑罰としての害悪が応報として正当化される。 

 これに対するものとして、科学としての犯罪学が現出した。ここでは犯罪人の意思に対する考え方が、自由意思論ではなく、客観的な実証的な観察の結果としての意思必至論となる。意思必至論を前提とする刑事責任は、道義的責任ではなく、社会的責任としての合理的な人道的なものに向かって進みつつある。

 自由意思に因る犯罪に対し応報刑としての害悪刑を科することが普遍妥当なものであり、厳粛命令であるということを前提に観念論を主張する論者もいる。これに対し、われわれは、犯罪の原因をたずねて、犯罪人のそれぞれに対し、科学的に適切な有効な方法を考えることに因り、犯罪人を社会復帰させることに刑事政策の目標があるとし、そこに、科学主義を主張することになっているのであるこれが、刑法における新しい進化の動きである

 牧野英一「刑事責任の性質について」、同『刑法と社会的責任』(1965年、有斐閣)102−106頁。

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