2023年11月12日日曜日

瀧川幸辰「刑法の人と学説(その五)」

  「一 刑事政策学派の指導者リスト」

 リストは、「刑事政策に目標を与えた人」で、「政治家肌」の人柄を有していた。大学教授になった後は、自己の研究室を「世界の各大学の刑法教授の養成所」と考え指導にあたっていた。そして晩年は、プロイセンの国会議員として政治と関係した。このリストを「刑事政策学派の指導者」ということが一般的だが、「理論刑法の学者としても第一流であった」。

 なおリストは、音楽家のフランツ・リストとは「従兄弟になる」。リストの父と音楽家とは特に仲が良かったため、「刑法学者は音楽家に可愛がられて大きくなった」。刑法学者が音楽を通じ国際文化に触れたことは、「その一生涯を通じて国際主義者として生きぬいた」要因となった。

 「二 刑事政策学派の発展」

 リストの刑事政策は、二つの思想「一つは社会防衛、他の一つは法的安全の思想」の上にある。刑罰の任務、目的は、犯罪人を社会に適合させるかそこから淘汰するかのいずれかであるが、「制限のない合目的的な処置」を彼は拒否する。具体的には、「行為となって現れない犯罪的意思」の処罰や、「法律が犯罪としない反社会的行為」の処罰は許されないとした(「刑法典は犯罪人のマグナ・カルタである」)。

 リストの理論には、「構成要件にしばられる刑法理論」(「法的安全と行為」)と「行為者だけを眼中において構成せられる刑事政策」(「社会防衛と行為者」)との間に緊張関係、二元主義が見られるー「『刑法は一方の手を犯罪人に対して脅迫的に突出し、他方の手で犯罪人をかばう』(イェーリング)」ー。

 リスト刑事政策の中心思想は、「改善可能者を改善し、改善不能者に対しては犯罪を行うことができないような処置をとる」というものだが、「改善可能を誇張することに反対し」「教育刑に対しては控目」な態度を取る。また改善不能者に対しての不定期刑については「極めて厳格な態度」をとり「社会防衛のための厳重な拘禁」を主張した。

 「三 刑法理論学者リスト」

 リストの刑法理論は「客観主義」(刑事政策では社会防衛が重要)であり、刑法では、「法的安全の思想」「裁判官の専断から犯罪人を保護すること」が重要であるとした。そしてリストの理論においては、犯罪の成立に「行為、違法、責任、構成要件の四つ」が必要とされ、犯罪は「客観的な行為として、外界に現れた意志変化として、明白な出来事として」表現されるとした。

 瀧川幸辰『刑法講話』新版(1987年、日本評論社)114-121頁。

【文学】ソロー『森の生活下』

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