二 比較的考察
(1) アメリカ
アメリカ最高裁は、修正14条(平等保護条項)の
名宛人は、州であって、個人ではないとしており、また、
この基本的態度は、今日も変わってはいない。そして近時では、この態度を崩さずに
『州の行為』の概念を広く解することによって、憲法上の保障を拡大しようとしている。
(2) ドイツ
ニッパーダイは、
ある種の基本権規定が私人間の関係に対して直接効力があるとしている。彼は、
すべての基本権について直接適用を主張しているわけではなく、またある種の基本権についていわゆる間接適用があることを否認しているものでもない。一方デューリッヒはこの直接適用説を否定し、間接適用説を主張する。
三 学説の検討
無効力説(
阿部教授の命名)は妥当ではない。
公私法を通ずる原則や私法秩序に関する原則を含む
全国法秩序の最高規範としての法律が憲法である点や、社会的権力からの要保護性という点を忘却しており、さらに国家には
個人の尊厳をまもるために行動する義務があるからである。
一方直接効力説にも問題はある。特に
国家対国民の場合には、国民のみが基本権の主体であるが、国民対国民の場合には、両者はいずれも憲法上同じ地位にあるという点との関係で問題である。そして、間接適用説は、基本権規定における
客観的価値秩序の存在と、この秩序が、全法領域に妥当することを認めているが、そうであるなら
私法関係について、直接適用を問題としなければならない場合もあり得るだろうし、
憲法解釈としても問題としなければならないことを、私法の解釈に委ねているきらいがある。
四 基本権規定と私人間の関係(私見)
この問題は、(A)いかなる基本権規定が、(B)いかなる法律関係について、(C)いかなる程度で、私人間の関係に及ぶのかが、考察されなければならない。
まず、明文で私人間においても権利を保障する旨定められているときは(憲法15条4項等)、
それらの規定の効力が私人間の関係に及ぶのは当然のことである。では、このような明文規定がない場合はどうか。まず、人権規定のうち、
第三者効力を論ずる余地がまったくないものがある(17条等)。
これらの規定も、ここでは除いて考えてよい。また28条の権利も、私人間における効力を認められる、と解するのが
素直な解釈である。
では、他の自由権、法の下の平等はどうか。
これら諸規定は、
個人が他のすべての権利主体に対して同様の権利を持つことを保障したものではない。しかし、憲法第三章の規定は、
社会生活においても尊重されるべき客観的法規範であり、私的自治といっても
このような憲法の価値体系の枠内で認められるものであることに注意を要する。この
客観的法規範としての基本権規定の法内容が私人間の関係に直接及ぶことも、論理上は存在するとみなければなるまい。
憲法の解釈においては、この
客観的法規範としての基本権規定がいかなる場合に私人間にも及ぶかが重要であり、直接か間接適用かは
憲法解釈としては、その次の問題である。例えば、先述(B)について言えば、
社会的権力に対しても個人の自由がまもられなければならない(
大企業と被用者、労働組合と組合員等)。
そして、自由権の他に
制度的保障および原則規範というものは、憲法以外の
他の法分野についても、一定の価値秩序を実現しようとして定められたものであるため、制度的保障および原則規範に
明らかに反する法律行為について、憲法上これを
無効ということができる(
私的な外部勢力が私立大学の自治を侵害するとき、
私有財産制を否定するような内容の私人間の契約等)。