2024年4月22日月曜日

【刑法学】牧野英一「改正刑法準備草案について」

  ① 十九世紀の刑法は、啓蒙哲学に依って合理化し人道化した。これに対し二十世紀の刑法は、犯罪学を基礎として犯罪人を矯正して社会に同化させることに重きを置く。

 ② 刑罰につき、ひたすらに応報刑主義客観主義を唱えるのではなく、刑罰は重かるべきに重くして、軽かるべきに軽きにおいてこそ一般予防効果を発揮する。

 ③ 戦後の刑法でも倫理的な責任の観念は重要である。しかし、それは責任を問うて叱責するの刑法ではなく、責任感を促進して一種の弱き者としての犯罪人を保護する刑法でなければならない。

 ④ 十九世紀の罪刑法定主義は、刑罰に対し法律に依って個人を保障するものであった。ここでは、刑罰は単に害悪たるに止まる。これに対し、二十世紀の罪刑法定主義においては、犯罪人は刑罰に依って保護せられねばならぬ(木村)。刑法は国家の機能を制限するものでなくして、国家の機能を促進するものでなければならぬ。ここに、刑法の刑事政策的意義がある。刑事政策のない刑法は、盲目であり、空虚である。応報刑主義および客観主義はそれである

 ⑤ 刑法とともに刑事訴訟法、行刑法も新しくならなければならない。行刑は、裁判を機械的に執行するだけのものではなく、裁判を実質的に取り扱い社会倫理的に効果あらしめるものでなければならない。また、刑事訴訟法の問題は、いかにそれを刑事政策化すべきかに在る

 牧野英一改正準備草案について同『刑法の新立法と新学説』(1962年、有斐閣)294ー296頁

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