① 十九世紀の刑法は、啓蒙哲学に依って
合理化し人道化
した。これに対し二十世紀の刑法は、犯罪学を基礎として犯罪人を矯正して社会に同化
させることに重きを置く。
② 刑罰につき、ひたすらに応報刑主義客観主義を唱える
のではなく、刑罰は重かるべきに重くして、軽かるべきに軽きにおいて
こそ一般予防効果を発揮する。
③ 戦後の刑法でも倫理的な責任の観念
は重要である。しかし、それは責任を問うて叱責するの刑法
ではなく、責任感を促進して一種の弱き者としての犯罪人を保護する刑法
でなければならない。
④ 十九世紀の罪刑法定主義は、刑罰に対し法律に依って
個人を保障するものであった。ここでは、刑罰は単に害悪たるに止まる
。これに対し、二十世紀の罪刑法定主義においては、犯罪人は刑罰に依って保護せられねばならぬ
(木村)。刑法は国家の機能を制限するものでなくして、国家の機能を促進するものでなければならぬ。ここに、刑法の刑事政策的意義がある。刑事政策のない刑法は、盲目であり、空虚である。応報刑主義および客観主義はそれである
。
⑤ 刑法とともに刑事訴訟法、行刑法も新しくならなければならない。行刑は、裁判を機械的に執行するだけのもの
ではなく、裁判を実質的に取り扱い
社会倫理的に効果あらしめる
ものでなければならない。また、刑事訴訟法の問題は、いかにそれを刑事政策化すべきかに在る
。
牧野英一改正準備草案について
同『刑法の新立法と新学説』(1962年、有斐閣)294ー296頁