2023年5月17日水曜日

【刑法学】風早八十二「弾圧法の過去と現在」

軍国主義と治安維持法の自己増殖

 治安維持法は二度、犯罪類型の拡張と重罰化を内容とする大改正を経ている。結果、同法による弾圧犠牲者も果てしなく拡大した。この治安維持法の悪魔的機能の『増殖』現象の背景には、寄生的土地所有と独占資本の両馬にまたがる『軍事的警察的天皇制』(旧日本軍国主義)の本質・役割とのかかわりがある。

 『聖域』としての『国体』観念

 治安維持法は、保護法益に『国体』と『私有財産制度』の二本の柱をおいた。ではこの国体とはなにか。これは、司法省によれば旧憲法における、万世一系の天皇による日本統治(1条)、神聖不可侵としての天皇(3条)、統治権の総覧者としての天皇(4条)を意味するとされた。これらの条項は、旧憲法における近代的粉飾をもぬぐいすてた生地の絶対主義』を表現する部分である。つまり治安維持法の国体は、旧憲法の『絶対主義』が生地のまま乗り移ったものであった。この国体は、国民が批判やそれを口にすることすらもはばかられる『聖域』であり、国体は思想警察を中心とする暴力装置で守られればならず、それのために犯罪類型の増殖を必要とした。

『思想犯』類型と特高警察の増殖

 治安維持法の『思想犯』類型は、二度の改正によりタテ、ヨコに増殖をとげたヨコへの増殖においては、『結社』概念の拡張が行われた。次に、タテの増殖においては、『結社の目的遂行のためにする行為』という融通無碍の犯罪類型が作られた。これは、前記結社のメンバーではない者を、メンバーとまったく同じ刑罰に処する法的根拠に使われた。この結果、結社のメンバーに一夜の宿を貸すとか、飯を食わせる行為まで処罰対象となった。

 『転向』の強制と予防拘禁制

 治安維持法の聖域は、これに反する思想を焚書により、思想の持ち主を隔離抹殺することになる。このために思想転向(国体への絶対帰依)が用いられた。検事は不起訴処分等の場で、裁判官は執行猶予等言い渡しの場で、思想犯保護観察審査会は保護観察にするか否かの決定を、裁判官は刑期満了者を予防拘禁に付するか否かの命令を、転向と引換に行使した。かくして刑期満了者は非転向を理由に、そのまま獄につながれ、死ぬまで出られないのである

 風早八十二『治安維持法五十年憲法』(1976年、合同出版)141−146頁。


【文学】ソロー『森の生活下』

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