五 現代憲法の展開
19世紀終わり、資本主義は矛盾を一層激化させ
、同時に労働者階級の社会的・政治的比重
が高まったため、支配者側も、階級対立を緩和し、体制の危機を避けるため
労働者に選挙権を付与し、結果、議会民主主義が確立していった。一方この矛盾をそらす
ため、独占資本は帝国主義的植民地獲得に向かい
第一次大戦となって爆発した
。その後、1919年にはワイマール憲法が成立した。この憲法は古典的立憲主義憲法から見て画期的であり、当時最も進歩的であると謳われ
た。
しかしながらワイマール憲法は、急進化するドイツの労働者階級
等にたいし、人間的な最低生活の保障と社会化を約束し、それが議会民主主義の道によって実現できるかの如き期待
を与えることで、プロレタリア革命が勃発するのにブレーキをかける役割をもつもの
であった。とは言え、これは支配階級の譲歩であり
幻想であるにせよ、大衆の利益を計ることを正面に掲げねば
体制が維持できなくなっていることの表れでもあった。
なお注目すべきは、中間階級
が無産階級へ転落
する危機も存したため、彼等によるその既得の地位保全への強い要求
に応えるべく、支配階級は彼等の要求をを受容し自己の側に引きつける
と同時に、統治体制そのものを支えてきた支柱として、伝統的制度の温存を
ねらった。これがワイメール憲法下での『制度保障』
であった。
そして第二次大戦後、ドイツではナチスが打倒され、西ドイツでは『人間の尊厳』と『人格の自由な発展の権利』を冒頭に掲げ、社会的法治国原理に立つ基本法が制定された
。そこにおいてクラインは
、第三者効力に関連せしめながら
原則規範について、それは国家生活の基本原則であり、憲法外部分法秩序ないし全体法秩序の最高の原則であり
共同生活の基礎的秩序である
として、基本権の第三者効力を是認した。
なお確立していった国民主権と、この第三者効力の関係はどうか。近代立憲主義の進行に伴い、国民の地位が次第に向上し、国民主権が確立
し、国民が国家の主人公となった。そしてこのような国民の地位を最も本質的に規定
するのが基本的人権であって、国民主権と基本的人権とがコロラリーをなす
と解される。
具体的に、人権主体としての個々の国民は、主権者としての全体としての国民を構成する
。全体としての国民は、人権の基本原理たる『自由』・『平等』の理念に基づいて
、個々の国民が、相互に平等な立場において
主権者たる国民を構成する。つまり主権を構成する国民相互の関係が、憲法上の根本問題となり
国民相互の現実の生活関係までもが、憲法にとって重大な関心事
となる。国民側としては、国民主権を単にイデオロギーに終わらせないためにも
、他人との間においても
国家権力と匹敵する社会的権力を持つ独占資本に対して、基本権が保障されねばならない
。ここで基本権の公法的第三者効力および社会法的第三者効力
の話が登場してくる。
稲田陽一憲法概念の展開
、同『憲法と私法の接点』(1970年、成文堂)243−250頁。