2023年6月25日日曜日

【憲法学】稲田陽一「憲法概念の展開」

  五 現代憲法の展開

 19世紀終わり、資本主義は矛盾を一層激化させ、同時に労働者階級の社会的・政治的比重が高まったため、支配者側も、階級対立を緩和し、体制の危機を避けるため労働者に選挙権を付与し、結果、議会民主主義が確立していった。一方この矛盾をそらすため、独占資本は帝国主義的植民地獲得に向かい第一次大戦となって爆発した。その後、1919年にはワイマール憲法が成立した。この憲法は古典的立憲主義憲法から見て画期的であり、当時最も進歩的であると謳われた。

 しかしながらワイマール憲法は、急進化するドイツの労働者階級等にたいし、人間的な最低生活の保障と社会化を約束し、それが議会民主主義の道によって実現できるかの如き期待を与えることで、プロレタリア革命が勃発するのにブレーキをかける役割をもつものであった。とは言え、これは支配階級の譲歩であり幻想であるにせよ、大衆の利益を計ることを正面に掲げねば体制が維持できなくなっていることの表れでもあった。

 なお注目すべきは、中間階級無産階級へ転落する危機も存したため、彼等によるその既得の地位保全への強い要求に応えるべく、支配階級は彼等の要求をを受容し自己の側に引きつけると同時に、統治体制そのものを支えてきた支柱として、伝統的制度の温存をねらった。これがワイメール憲法下での制度保障であった。

 そして第二次大戦後、ドイツではナチスが打倒され、西ドイツでは人間の尊厳』と『人格の自由な発展の権利』を冒頭に掲げ、社会的法治国原理に立つ基本法が制定されたそこにおいてクライン第三者効力に関連せしめながら原則規範について、それは国家生活の基本原則であり、憲法外部分法秩序ないし全体法秩序の最高の原則であり共同生活の基礎的秩序であるとして、基本権の第三者効力を是認した。

 なお確立していった国民主権と、この第三者効力の関係はどうか。近代立憲主義の進行に伴い、国民の地位が次第に向上し、国民主権が確立し、国民が国家の主人公となった。そしてこのような国民の地位を最も本質的に規定するのが基本的人権であって、国民主権と基本的人権とがコロラリーをなすと解される。

 具体的に、人権主体としての個々の国民は、主権者としての全体としての国民を構成する。全体としての国民は、人権の基本原理たる『自由』・『平等』の理念に基づいて、個々の国民が、相互に平等な立場において主権者たる国民を構成する。つまり主権を構成する国民相互の関係が、憲法上の根本問題となり国民相互の現実の生活関係までもが、憲法にとって重大な関心事となる。国民側としては、国民主権を単にイデオロギーに終わらせないためにも他人との間においても国家権力と匹敵する社会的権力を持つ独占資本に対して、基本権が保障されねばならない。ここで基本権の公法的第三者効力および社会法的第三者効力の話が登場してくる。

 稲田陽一憲法概念の展開、同『憲法と私法の接点』(1970年、成文堂)243−250頁。

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